Ⅱ難治性下痢症診断アルゴリズムの解説:
アルゴリズムに含まれる疾患の解説
14シュワッハマン・ダイアモンド症候群
1)疾患概要
シュワッハマン・ダイアモンド症候群(Shwachman-Diamond syndrome:SDS)は膵外分泌の異常と血球減少,骨格異常を特徴とする常染色体劣性遺伝性疾患で,リボソーム生成に関与するSBDS(Shwachman-Bodian-Diamond syndrome)蛋白の異常である.治療としては膵酵素,脂溶性ビタミンの補充,貧血,血小板減少に対しては輸血,重症例では造血幹細胞移植が考慮される.
2)病因遺伝子
常染色体劣性遺伝形式をとり,患者の90%がSBDSに変異を認める.SBDSはリボソームの生成や細胞の有糸分裂の際の紡錘体の安定化にかかわっているとされている.
3)疫学
世界における推定発生頻度は75,000人に1人とされ,わが国では20家系程度の報告がある.
4)臨床症状
膵外分泌異常,血球減少,骨格異常をおもな症状とする.膵外分泌異常による栄養吸収障害や好中球減少による易感染性,貧血や血小板減少,骨格異常,低身長などがみられる.
5)治療
膵外分泌異常に対しては膵酵素補充と脂溶性ビタミン(A,D,E,K)の補充が行われる.好中球減少に対しては,抗菌薬の投与や必要に応じてG-CSF投与が行われる.重度の貧血や血小板減少にはそれぞれ輸血が行われるが,重症の場合や白血病,骨髄異形成症候群を伴う場合には造血幹細胞移植が選択される.
6)合併症
15~30%において骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)や急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)を発症する.
7)診断の手引き
①診断方法
・常染色体劣性遺伝
・好中球減少による易感染性,貧血,血小板減少
・膵外分泌異常
・骨格異常(低身長など)を伴うことが多い
・MDS,AMLを発症することが多い
・90%以上でSBDS遺伝子に変異が認められる
上記臨床症状のもとSBDS遺伝子解析により確定診断に至る.
参考文献
・Ikuse T, Kudo T, Arai K, et al.: Shwachman-Diamond syndrome: Nationwide survey and systematic review in Japan. Pediatr Int 2018; 60: 719-726.
・Taneichi H, Kanegane H, Futatani T, et al.: Clinical and genetic analyses of presumed Shwachman-Diamond syndrome in Japan. Int J Hematol 2006; 84: 60-62.