難治性下痢症診断の手引き
-小児難治性下痢症診断アルゴリズムとその解説-

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疾患各論1

難治性下痢症診断アルゴリズムの解説:
アルゴリズムに含まれる疾患の解説

後天性サイトメガロウイルス感染症

 後天性サイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)感染症の症状の一つに下痢があげられる.生後早期のCMV感染はおおむね不顕性で後遺症もないとされてきたが,周産期医療の進歩によって救命されるようになった未熟性の強い児においては症候性となり,時に致死的となる.おもな感染経路として母乳,産道,輸血があげられるが,既感染の母親の多くが母乳中にCMVを分泌しており,最も重要な感染源と考えられる.診断は抗CMV抗体検査のみでは難しく,またCMV抗原検査は好中球の貪食能が生理的に弱い未熟児では感度が低い.最も臨床的に有用な検査はreal-time PCRであり,ウイルス負荷を定量的に検出できるので,治療効果の判定にも利用できる.活動性の病変が生命予後に影響し,後遺症を残すおそれのある場合は抗ウイルス療法が有効である可能性はあるが,現状ではエビデンスのあるガイドラインは存在しない.