難治性下痢症診断の手引き
-小児難治性下痢症診断アルゴリズムとその解説-

お問い合わせ
※医療従事者のみ

疾患各論2

難治性下痢症診断アルゴリズムの解説:
アルゴリズムに含まれていない疾患の解説

カイロミクロン停滞症(CRD)

1)概念・病因

 カイロミクロン停滞症(chylomicron retention disease:CRD)は,小腸上皮細胞におけるカイロミクロンの輸送障害によって引き起こされる,稀な先天性下痢症である.これまでに全世界で約50例,わが国では2例報告されている.常染色体劣性遺伝で,SAR1B遺伝子に異常を認める.乳児難治性下痢,体重増加不良,脂肪吸収不全が主な症状である.低コレステロール血症を呈するものの中性脂肪が正常であること,また病理検査において小腸上皮細胞の細胞質に脂肪滴が充満していることで疑われる.その他の遺伝性低コレステロール血症である,低βリポ蛋白血症,無βリポ蛋白血症との鑑別が必要となる.低および無βリポ蛋白血症では,脂肪吸収不全に起因する神経・筋,眼科的合併症が問題となるが,CRDではそれらの合併症は軽度とされる.成長に伴い脂肪吸収不全が徐々に改善する症例も多い.しかし,長期予後については不明な点も多く,成長期の慎重なフォローが必要である.

参考文献

・Peretti N, Roy CC, Sassolas A, et al.: Chlomicron reten- retention disease: A long term study of two cohorts. Mol Peretti N, Sassolas A, Roy CC, et al.: Guidelines for the diagnosis and management of chylomicron retention disease based on a review of the literature and the experience of two centers. Orphanet J Rare Dis 2010; 5: 24-37.

・岡田知雄,宮下理夫,大熊洋美,他:アンダーソン病(Andreson disease/カイロミクロン停滞(蓄積)症).日本臨牀 2013;71(増刊):256-260.