難治性下痢症診断の手引き
-小児難治性下痢症診断アルゴリズムとその解説-

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疾患各論2

難治性下痢症診断アルゴリズムの解説:
アルゴリズムに含まれていない疾患の解説

ミトコンドリア呼吸鎖異常症(MRCD)腸症(mitochondrial respiratory chain disorders-related enteropathy)

1)概念・病因・症状

 ミトコンドリアの役割のうち最も重要なエネルギー(ATP)の生合成を担うのがミトコンドリア呼吸鎖複合体である.したがって,これまでミトコンドリア病とされてきた疾患群は,現在ではミトコンドリア呼吸鎖複合体異常症(mitochondrial respiratory chain disorder:MRCD)とよばれ,いかなる症状,いかなる臓器・組織,いかなる年齢,そしていかなる遺伝形式でも発病しうる.従来ミトコンドリア病として知られていた疾患としては神経・筋肉の疾患が主であったが,心筋症,肝症のほか,慢性仮性腸閉塞症や難治性下痢症の原因となることが明らかとなってきた.便の性状は水様下痢を呈するが,便電解質は症例や投与している経腸栄養剤の種類によって様々であり,浸透圧性下痢と分泌性下痢のいずれかに分類することは難しい.
 なお,本疾患は“ミトコンドリア呼吸鎖複合体欠損症”として小児慢性特定疾病に登録され,“ミトコンドリア病”として指定難病に登録されている.さらに,指定難病の関連資料としてミトコンドリア病ハンドブック(PDF版)が発行されている(http://www.nanbyou.or.jp/upload_files/mt_handbook.pdf).