2015年10月、酸化マグネシウム製剤を服用した患者様が「高マグネシウム血症」となり、意識障害などの重篤な症状をおこし、死亡にいたった例もあったことが報告されました。それを受けて、厚生労働省が、特に報告の多かった高齢者の服用について、注意喚起するよう製薬会社などに指示したことがニュースになりました。
酸化マグネシウムは、一般的な便秘薬で、とても多くの方に飲まれています。小児慢性機能性便秘症診療ガイドラインでもその使用が推奨されており、子どもさんがその薬を飲んでいるという保護者の方も大勢おられますので、そのニュースを知って、安全性が心配になられた方もおられるかと思います。
そこで、私たち、小児慢性便秘症診療ガイドライン作成委員会では、様々な情報を集めて小児での安全性について検討いたしました。その結果、以下の結論となりましたので、ご参考にしていただければと思います。
高マグネシウム血症とは、血液(血清)中のマグネシウムの濃度が基準値を越えることをいいます。正常に腎臓が働いている状態では、体にとって余分なマグネシウムは尿へ排泄されるので、基準値を少し越えた程度では問題になりません。しかし、ある程度以上高くなると、頭痛、吐き気、嘔吐、立ちくらみ、めまい、脈が遅くなる、体がだるい、力が入りにくくなる、眠気でぼんやりする、うとうとする、などの症状があらわれることがあります。
現在までに知られている高マグネシウム血症の患者さんはほとんどが成人、特にご高齢の方であり、もともと腎臓などになんらかの病気をもっておられる方です。小児では、とてもまれなようで、便秘のほかに病気がなく、小児の一般的な用法・用量で酸化マグネシウム製剤の治療をうけ高マグネシウム血症になった小児患者様は、私たちが国内外の論文や医薬品の副作用に関するデータベースを調べた範囲ではみあたりませんでした。また、現在までに作成委員が便秘症で酸化マグネシウムを飲んでいる子どもさんの血液を調べた結果でも、腎臓などに特別な異常がない場合には、問題になるような値はありませんでした。
ただし、下の表に挙げたような病気がある方は高マグネシウム血症になりやすいことが知られていますので、このような病気がある方が酸化マグネシウムを飲むと血液中のマグネシウム濃度が異常に上昇することがあると考えられます。したがって、小児でもこのような病気がある方や、そのような状態になった場合には十分に注意する必要があると思われます。
以上のことから、現時点の作成委員会の判断としては、「(表に挙げたような)特別な病気や原因がなく、正しい量を服用している小児では、酸化マグネシウムの服用によって危険なレベルの高マグネシウム血症がおこることは極めてまれなことであり、便秘症に対して有効性がみとめられている場合には、一般的に有益性をうわまわる危険性があるとは考えられない」という結論になりました。
便秘の治療では、正しい量の薬をきちっと飲むことがとても大切です。自己判断で、薬を中断することはなさらないでください。また、自己判断で量を増やすようなことも絶対になさらないでください。
なにか疑問や不安を感じておられる方は、まず主治医の先生に相談してください。 |
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